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待機児童問題の解決策はこれだ。古市憲寿氏『保育園義務教育化』【本感想】

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 「保育園落ちた日本死ね」「#保育園落ちたの私だ」なんてニュースが最近話題になっている。保育園に幼児を預けたくても預けられない。そんなお母さんたちの悲痛な叫びだ。

 待機児童の数は増え続け、2014年の調査では、待機児童数はなんと4万3000人もいるという。しかも、これは氷山の一角であると言われている。こどもを持つ専業主婦の多くは「子どもを保育園に預けられれば働きたい」と考えている。専門家の試算では、潜在的な待機児童数は少なくとも100万人、中には300万人なんていう膨大な数の推計もあるという。

 では、この待機児童問題をどうすれば、解決できるだろうか。一つの解決策を提案している本がある。それが、古市憲寿氏の『保育園義務教育化』だ。フジテレビの「ワイドナショー」で炎上したり、ダウンタウンの松本人志さんに「チキン」と言われたりと、何かと話題になっている社会学者だ。「保育園義務教育化」は小学校・中学校だけではなく、保育園まで義務教育の枠組みに入れてしまえとの考え方だ。

 いっそ保育園を義務教育にして無料にしてしまえば、誰もが気軽に、安心して子どもを産めるようになるのではないだろうか。

「義務教育」ということになれば、国も本気で保育園を整備するから待機児童問題もなくなるだろうし、保育園があることが約束されていれば「うっかり」子どもを産んでしまいやすくなる。

「義務教育」だと、子どもを保育園に預けることに、後ろめたさを感じることもなくなる。「国が義務というから仕方なく保育園に行かせてるんだよね」と「国」を理由に堂々と言い訳ができるようになるからだ。

(出典:『保育園義務教育化』)

  このアイディアにはいくつものメリットがある。

 

【メリット1】待機児童が0になる

 保育園が義務教育になるので、もちろん待機児童数は必然的に0になる。国や地方自治体は子どもの数だけ保育園を作らなければならない。また、親には子どもを保育園に行かせる義務が生じる。保育園に子どもを預けることへの後ろめたさもなくなるだろう。なにせ、国からの命令だ。

 さらに、このことにより、働く女性の数は増え、日本の労働人口は増加し、経済成長にも貢献する。二人目、三人目の子どもを産んでみようと思う家庭も増えるだろう。なんと「保育園義務教育化」という制度は、「待機児童問題」「日本の経済成長」「少子高齢化問題」に大きな貢献するのだ

 

【メリット2】「お母さん」の負担が減らせる

 子育ては、極めて大変なことである。日本保育協会が行った調査では、少なくない保護者が「子どものいない人がうらやましい」「子育てが重荷」「時間に追われて苦しい」と答えている。

 女性は一日平均7時間41分を家事に費やしているが、そのうち3時間22分を育児に当てているという。一方で男性は、育児と家事を合わせて1時間7分、育児はわずか39分しか時間をかけられていない。

 アメリカでは、男性が家事に3時間13分、育児に1時間5分、スウェーデンでは家事に3時間21分、育児に1時間7分とのこと。世界的に見ても、日本の「お母さん」に対する育児の負担は大きい一方で、「お父さん」の育児にかける時間が極めて少ない。日本では「お母さん」に過剰な負担がかかっているのだ

 これは、断じて日本の「お父さん」がダメだという話ではない。日本のお父さんたちは、世界でも有数の長時間労働をこなしている。必然的に育児にかける時間は少なくなってしまう。

  もし、「保育園義務教育化」をすれば、お母さんの育児にかける時間を減らすことができ、自由な時間を得ることができるだろう。お母さんの育児に対するストレスは減り、これもまた日本社会全体を良い方向に持って行ってくれるはずだ。

 

【メリット3】将来日本を担う人材が育てられる

 経済学者の中で、ほぼ定説となっている見解があるという。「子どもの教育にお金や時間をかけるなら、小学校入学前の幼児の教育が最も重要である」といったものだ。 これは、本当なのか?とちょっと疑わしくなるが、きちんとした実験のデータがある。アメリカで行われた「ペリー幼稚園プログラム」だ。

 この実験では、貧しい地区に生まれた3歳から4歳の子どもたちに、質の高い就学前教育を提供した。子ども6人に対して1人の大学院修士号以上を持った先生が担任をし、読み書きなどのレッスンを週に5日、2年間続けた。さらに毎週90分の家庭訪問をし、親にも積極的に介入した。

 この教育を受けられなかった幼児たちと比較し、40年間にわたって追調査をした。小学校入学以降の教育的介入は一切行われなかった。

 結果、なんとプログラムを受けた幼児たちの方が、高校卒業率は高く、持ち家率も高く、所得も高く、逮捕率も低いとの結果となった。質の高い就学前教育は、「人生の成功者」になる確率を高めるのだ

 これは、小学校に入る前に勉強をしたおかげで、学力が高くなったとの話ではない。確かに、小学校入学時にプログラムを受けた子どもたちは、そうでない子どもたちと比較して、学力も高ければIQも高かった。しかし、8歳前後で差がなくなってしまったという。

 子どもたちは「生きる力」や「人間力」が鍛え上げられていた。社会性、忍耐力、すぐに立ち直る力、広い意味での生きていくために必要な「能力」が高まっていたのだ。これが彼らの将来の成功を支える礎になっていたのだ。

 「保育園義務教育化」をすれば、教育水準の全体の底上げとなり、将来の日本を支えていく人材が育っていくだろう。

 

 もちろん、「保育園義務教育化」はいいことだけではない。「財源や土地はどこにあるんだ」とか、「保育園は教育機関ではなく養育機関だ」とか、「専業主婦から子どもを奪うのか」などなどだ。そのことは古市氏も認めている。

 しかし、保育園に入れないと言って国会の前でデモが起こるような今の状態は悲惨だし、異常事態だ。何とかしなければならない。お母さんたちの負担を減らして、もっと子どもがどんどんと生まれる社会になった方がいいなとも個人的には思う。

 そんな社会にするために、「保育園義務教育化」というアイディアは、一つのいい回答かなと感じた。

 変なことを言って炎上したりと、世間で何かと叩かれることの多い古市憲寿さんだが、この本の中ではびっくりするほどお母さんたちに対する愛が溢れた内容となっている。古市さんに対するイメージも変わる。気になった人には是非読んでみて欲しいなと思う。

 

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