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思想・行動の自由が一切ない独裁国家『一九八四年』【小説感想】

 

1984年現在、世界はオセアニア、ユーラシア、イースタシアの三強国によって支配されている。

オセアニアはユーラシアと交戦状態にあり、イースタシアとは同盟関係にある。

ほんの四年前まではオセアニアはイースタシアと戦争をし、ユーラシアと同盟を組んでいたがこれらの関係は変化をしてしまった。

だが、ほんの四年前の真実はどこにも記憶されていない。

オセアニアの公式発表では、敵国のユーラシアは絶対悪であり味方同士であった過去などないのだ。

”過去をコントロールするものは未来をコントロールし、現在をコントロールするものは過去をコントロールする”

舞台はオセアニア、ロンドン。この国は「ビッグ・ブラザー」率いる党に支配されている。

国民に行動・思想の自由はなくその一挙手一投足は全て監視される。

ジョージ・オーウェルに政治色の極めて強いSF小説。

 

「一九八四年」の見どころ

ウィンストン・スミス

『一九八四年』の主人公はウィンストン・スミス。

オセアニアの真理省に勤めて歴史の改ざんをすることを業務とする。

もし、誰もがある者の押し付ける嘘を受け入れてしまえば、そべての記録に同じ作り話を記することができれば、その嘘は歴史に移行し真実になってしまう。

オセアニアの支配する党はありとあらゆる記録を改ざんする。

過去にあった真実はもう誰にとっても明らかなものではなくなってしまってた。

政府は四つの省がその実務を担い、真理省は報道、娯楽、教育及び芸術を、平和省は戦争を掌握。愛情省は法と秩序の維持を担当し、潤沢省は経済問題をそれぞれ引き受けている。

 

テレスクリーン

記録の制圧だけではない。人々の生活は”テレスクリーン”と呼ばれる装置によって監視されている。

声を殺して囁くぐらいは可能だとしても、それ以上の物音は全て拾われて「思想警察」に送られてしまう。

街中にもマイクが仕掛けられており、屋内・屋外問わず人々の行動は24時間監視される。

記録の改ざんて監視活動により市民生活は統制され、自由などは存在しない。

 

党への裏切り

主人公のウィンストン・スミスは役人だが現体制に対して疑問を持ち始め、ノートに自分の思想を書くという禁止行為に手をそめる。

 

未来へ、或いは過去へ、思想が自由な時代、人が個人個人異なりながら孤独でない時代へーー真実が存在し、なされたことがなされなかったことに改変できない時代へ向けて。

画一の時代から、孤独の時代から、<ビッグ・ブラザー>の時代から、<二重思考>の時代からーーごきげんよう!

 

もし、このことがバレれば死刑か最低二十五年間の強制労働収容所送りになることは免れない。

さらには、とある女性との出会いを契機にウィンストンは反政府活動へとその身を置いていくこととなってしまう。

『一九八四年』ではこの党の統制に疑問を持ってしまった役人・ウィンストンの命運を中心に書かれている。

 

終わりに

というわけで、『一九八四年』を紹介した。

ジョージ・オーウェルによる政治色の極めて強いSF小説だが、凄い未来技術がでてくるといったわけではなく、全体的に荒廃的な雰囲気が漂う。

かなり昔に書かれた古典小説だが、現在の社会と照らし合わせてもドキッとしてしまうような描写も多い。

これが長く読み継がれている一つの秘訣となっているのだろうと思う。

 

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