フィンランドという国に対してどんなイメージをもっているだろうか?
北欧に位置し、森林の広がる国家でサンタクロースの故郷とも言われる。
社会福祉では「高負担・高福祉」の国として知られ、税金は高いがその代わりに社会福祉は充実していて死ぬまで国に面倒を見てもらえる。
教育水準も高い。PISAという国際学力テストで2001年に1位を獲得して以来、教育大国としても注目されている。
「日本では北欧のフィンランドのような国を目指すべきだ」との意見が特にリベラルの人を中心に聞かれる。
だが、果たしてフィンランドは本当に理想の国家なのだろうか?
フィンランドと日本、それぞれの国を代表する若手社会学者2人が「フィンランド」を徹底的に分析したのがこの本である。日本からは古市憲寿氏が著者として加わる。
本の構成としては、「教育」「福祉」「起業」などをテーマとしてフィンランドの学者、評論家などが自国について語り、それを古市氏が分析するとの流れとなっている。
フィンランドの学者、評論家は日本でいうと「朝生」にでてくるような強力なラインナップとのこと。
北欧の国・フィンランドの真実が記されている。
「国家がよみがえるとき」のここが面白い
何度も挫折した国、フィンランド
「高福祉国家」「教育大国」などと言われるフィンランドだが、その道のりは困難なものだった。
フィンランドは何度も挫折し、そのたびに復活を果たした国である。
20世紀に入るまでは、スウェーデンとロシアの支配下にあり、ようやく独立を果たす。
第二次世界大戦ではロシアと戦うことになり敗戦。多額の賠償金を払い、領土を失う。
戦後復興も他のヨーロッパ諸国から遅れをとり、ようやく復興を果たした時期に重要な貿易パートナーだったソ連が崩壊。
GDPは4割も減り、深刻な財政赤字を抱えた。
それでIT立国化を進め、教育改革もした。結果として、携帯電話のシェアで1998年から2011年まで世界トップだった「ノキア」を生み出すことに成功する。
人口500万人で、北海道ほどの人間しかいない国の携帯会社が世界市場を席巻した。
しかし、iPhoneの登場によりスマホ事業への移行に失敗し、ノキアの携帯部門はマイクロソフトに買収されてしまった。
フィンランドの歴史は挫折の連続だったがそのたびに復活してきた国なのだ。
そして現在も新たな復活へと今度は国を挙げて「起業」に支援をし、新たな事業を生み出そうとしている。
やや辛口なフィンランド批評
この本はフィンランドを絶賛している本かというと実はそうではない。
フィンランド人の学者、評論家がやや辛口ぎみにフィンランドは「高福祉国家」でもなければ「教育大国」でもないと論評している。
例えば、教育の面ではPISAという国際学力テストでOECD加盟国の中で最高となった。
しかし、これはフィンランドの学生の平均点が世界一になっただけであったと言う。
高得点を出した生徒の数で言えば、日本、韓国、オランダ、ベルギーなどの方が多かった。これらの国では高得点を得た者の割合が7.0〜10.5%であるのに対して、フィンランドでは6.7%に満たない。
優秀な生徒の数では負けてしまっている。不優秀な生徒の点数が他の国より高かっただけであると述べている。
これ以外にも「高福祉国家」であることなどにも疑問が述べられている。
日本でも、日本人の評論家は自国に対して厳しいがフィンランドでもそれは同じなのかもしれない。
しかし、フィンランドは何度も挫折しつつも、何度も復活していることは事実。
これから何度も挫折を味わうであろう日本も参考にできる点は多いはずだ。
終わりに
というわけで、『国家がよみがえるとき』を紹介した。
フィンランドの学者、評論家と日本の社会学者、古市憲寿氏によるフィンランドの分析が書かれた本当なっている。
何度も挫折を経験したフィンランドの復活から、日本も必ず学べることがあるはずだ。
「高福祉国家」と言われる北欧の国々の現実などに興味のある人にはおすすめの本である。
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