九歳の夏休み、少女は殺された。
犯人は、同級生の九歳の少女。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなく。
殺人者の少女は兄と一緒に死体を隠すことにした。
こうして、幼い兄妹の四日間の冒険が始まった。
次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追及から逃れることができるのか?
死体をどこへ隠せばいいのか?
子供が被害者で犯人で共犯者のサスペンス小説。彼らの冒険に息を飲む。
「夏と花火と私の死体」のここが面白い
被害者と殺人者の少女
被害者・五月と殺人者・弥生は共に九歳でよく遊ぶ中の良い友達。
それは唐突な殺人だった。
殺人者・弥生は兄を溺愛している。そんな弥生に五月が、弥生の兄の健が好きだと言ってしまう。
九歳の子供の無邪気な恋。
だが、この一言がきっかけで彼女はその命を失うことになる。同級生の手によって。
死体視点の物語
閉められていない蓋一枚分の窓からは、わたしの足の先が見えていた。
片方の足にはサンダル。もう片方の足は素足で、泥がついていた。
素足のほうをまじまじと眺められて、わたしは少し恥ずかしくなった。
(出典:『夏と花火と私の死体』)
この小説は全編、被害者の五月視点で進んで行くことになる。
これは五月が死んでからも続く。
この五月の視点から感情をほとんど感じることができずに、まるで自分の死体を物のように扱っている。
この一人称の語りが物語のおぞましさをより際立たせる。
無邪気な兄妹の冒険物語
同級生を殺した少女とその兄。二人はその死体を隠すこととなったのだが、二人から罪悪感のようなものは一切感じられない。
それどころか、読み進めているとひと夏の冒険小説を読んでいるかのように錯覚してしまうほどにとにかくやること為すことに邪気がない。
だか、二人のやっていることをふと思い出すとかなりゾッとしてしまう。
ここまで無邪気な犯罪者は見たことがない。
終わりに
というわけで、『夏と花火と私の死体』を紹介した。
同級生を殺した少女とその兄によるサスペンス小説。
ここまで読んでもらえたのなら表紙を見てみて欲しい。脱力している少女を背負う少年にそれを支えるもう一人の少女。予備知識なしでは遊んでいるようにしか見えないこの絵を見え方が変わっているはずだ。
最後までワクワクとハラハラが止まらないサスペンス小説となっている。
この本の中にはもう一つの小説『優子』も 収録されている。
無邪気な恐怖を味わいたい人にはおすすめの小説である。
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