突然の事故で記憶と左眼を失ってしまった女子高生の白木奈深。
臓器移植手術で死者の眼球の提供を受けたのだが、やがてその左眼は様々な映像を脳裏に再生し始める。
それは、かつてこの眼が見てきた風景の「記憶」だった。
この記憶を元に菜深は、監禁された一人の少女の存在に気づいてしまった。
眼球の記憶に導かれて、提供者が生前に住んでいた町をめざして旅に出る。
そして、悪夢のような事件に巻き込まれていく。
移植された臓器が疼くサスペンス小説。暗くて不気味な童話と共に物語は進んで行く。
「暗黒童話」のここが面白い
記憶と眼球を失った少女
奈深は交通事故によって「記憶」と「左眼」を失った。
かつては、生活態度も真面目で勉強も運動もできた優等生だったが、事故後は見る影もなくなり親にも他人のようだと言われてしまうほどの変わりようだった。
性格は暗くなり、友達の失う。
そして、事故後は空洞だった左眼の穴には他人の眼球が収められている。
提供者の少年・和弥、記憶を見せる左眼
昔、この左眼は和弥という実在の人物が所有する眼球だったのだ。
その彼の眼が、回りまわって、私の顔にはまっている。
これまで見てい たものは、和弥が見て、記憶していたものだったのだ。
私のつけていた『夢の記録』というファイルは、呼び名が間違っていた。
正式 には、『かつて眼球が見た景色の記録』が正しかった。
(出典:『暗黒童話』)
最初は左眼の見せる映像は、想像で作った夢だと思っていた。
だが、そのあまりに詳細な内容に、これが元の眼の持ち主の記憶だと気付いてしまった。
そして、その映像を追うことで本来絶対に明かされない臓器提供者の名前・和弥のことを知る。
監禁された少女
臓器を提供している和弥や既に死んでいる。
そして、死の間際に和弥はとある場所に監禁された少女をその左眼でしっかりと見ていた。
彼は、彼女を助けることなく死んでしまう。
菜深は和弥の記憶と思いを引き継いで、未だに監禁されているであろう少女を救うべく和弥の住んでいた街を訪ねた。
そして、悪夢のような事件に巻き込まれていくことになる。
終わりに
というわけで、『暗黒童話』を紹介した。
臓器移植を受けた少女が、左眼の記憶を元に監禁された少女を救おうとするサスペンス小説。
途中で何度も挟まれる童話が、物語全体に暗くて不気味な雰囲気を漂わせる。
背筋が冷たくなる恐ろしい小説を読みたい人にはおすすめの作品である。
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