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ちょっと変わった日常の事件から始まる恐怖『満願』【小説感想】

 

 「このミステリーがすごい!」1位、「直木賞」候補等々の話題作。表題作を含めた6つの短編から構成された短編集で構成されている。作者の作品は、ほぼ全て読んでいる好きな作家で購入した。

ちょっと変わった日常の事件から始まるミステリ

 被疑者を射殺したが、引き換えに自分の命を失ってしまった警察官。その日何があったのか、上司視点で語られる「夜警」。両親の離婚騒動と親権争いが勃発した家族。どちらの親についていくのかの顛末を娘視点で語られる「柘榴」。かつて世話になった人が殺人事件を起こした。その人の弁護をすることになった弁護士目線で物語の進む「満願」 などどれもちょっとした日常の事件から物語はスタートする。最後の1行まで緊張感が続き、結末までページをめくる手が止まらない。なんとも言えない嫌な後味がどの物語も魅力的である。

かつての恩人が起こした殺人事件。その衝撃の動機とは...

 個人的に一番面白かったのは表題作の「満願」だった。

 待ち詫びていた電話が入ったのは、午後の一時を過ぎてからのことだった。

「先生。おかげさまで、今朝方出所いたしました。本当にいろいろとお世話になりました」

 受話器の向こうから聞こえる鵜川妙子の声は、懐かしく、昔と変わらない。接見は何度もしてきたが、私が思い出すのはやはり、学生時代に見ていた彼女の姿だった。

(出典:『満願』)

 「満願」が最後の結末で一番ぞくっときた。背筋をさっと撫でられたような感じ。二番目は「柘榴」が良かった。これもおちでゾクゾクくる。やはり小説でおちの衝撃感が強い作品は面白かったと感じ、いつまでも覚えていることが多い。

 

 文章の読みやすさやテンポの良さ、さらに物語がどの方向に進んでいくかのわからないドキドキ感がすごい。短編のため一つの話が50ページ程度で構成されているのでちょっとした空き時間に読むのにもいいかもしれない。ただし、ページから手が離れなくなるかもしれないので注意が必要かも。

 

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