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命をかけた「ゲーム」。日本軍の世界を相手にしたスパイ合戦。『パラダイス・ロスト』【小説感想】

 

 五感と頭脳を極限まで駆使した、命を賭けた「ゲーム」に生き残れ。異能の精鋭たちによる、究極の"騙し合い"がここにある。

 柳広司による、第二次世界大戦頃の日本や世界を舞台にしたスパイ合戦の物語が「ジョーカー・ゲーム」シリーズである。結城中佐の発案で日本陸軍内にスパイ養成学校「D機関」が設立された。日本中から集めた若き精鋭達にスパイ技術を叩き込み、「死ぬな、殺すな」を信条に世界に対して頭脳戦を仕掛けていく。

 諜報・変装・密告・裏切りと頭脳明晰なスパイ達が敵から少しでも情報を奪い、大戦を有利に進めようと暗躍していく。『パラダイス・ロスト』は「ジョーカー・ゲーム」シリーズの第3作目である。

 

暗号名ケルベロス

 「ジョーカー・ゲーム」シリーズは日本のスパイ機関である「D機関」とその創設者の結城中佐を中心にストーリーが進む短編集となっている。『パラダイス・ロスト』には4つの話しが含まれる。

 『パラダイス・ロスト』内では「暗号名ケルベロス」が面白かった。第二次世界大戦直前の時期にサンフランシスコから横浜へ向けて出航した《朱鷺丸》にイギリスからの”教授(ザ・プロフ)”と呼ばれる秘密諜報機関所属のスパイが乗っていた。

 彼は目・鼻・唇・顔・髪の色・髪型など全てを最先端の医療整形技術を使い変装していた。彼を見つけだし日本に入国させないために「D機関」所属の内海が挑む。

 内海は”教授”が出した意外な”尻尾”を掴んだが、事の顛末は想定の範囲外に転がりだす。「ナチス・ドイツのエニグマ暗号変換器を解読する秘密のプロジェクト」、「イギリス国軍の陰謀」等が複雑に絡み合い緊張感のある心理戦・頭脳戦が繰り広げられる。

 

「D機関」のスパイたち

 D機関所属のスパイは厳しい選考と訓練を経たエリートである。

 試験は非常にユーモアのある内容で、受験者のある者は試験会場までの歩数、階段の数を問われ、別のある者は世界地図を広げて小さな島の位置を尋ねられたが、その地図からは島が巧妙に消されていた。受験者がそのことを指摘すると、今度は広げた地図の下、机の上にどんな品物が置いてあったかを質問された。意味をもたない文を幾つか読まされ、しばらく経ってからその文を逆から暗唱させられた。

 そんな”ユニーク”だが、「D機関」のスパイには必要な要素が詰まった試験。それを突破人間のみが所属を許される。そこからさらに精神と肉体の限界を問われる訓練の数々に身を置くことになる。

 D機関のスパイ達は変装・諜報・人心掌握等の全ての技術に秀でている。そんな彼らが行う世界を相手にしたスパイ「ゲーム」である。面白くないわけがない!!

 

メディアミクス

 「ジョーカー・ゲーム」は実写映画とTVアニメでメディアミクスされている。TVアニメは2016年4月から放送予定となっている。

・アニメPVはこちら 

 

まとめ

 というわけで、「ジョーカー・ゲーム」シリーズの『パラダイス・ロスト』を紹介した。まだ、「ジョーカー・ゲーム」シリーズを未読の人は第一作目の『ジョーカー・ゲーム』から読むことをおすすめする。読みきりなので『パラダイス・ロスト』から読んでも問題はないが一作目から読んだ方が設定等が頭に入りやすいと思う。

 「ジョーカー・ゲーム」シリーズは、頭脳明晰なスパイ達による痺れる頭脳戦・心理戦に興奮したい人には、是非読んでほしい作品となっている。

 

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