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舞台は京都。電子葉による超情報化社会の到来『know』【小説感想】

 

超情報化対策として、人造の脳葉「電子葉」の移植が義務化された2081年の日本・京都。

あらゆる情報があらゆる場所で取得できる時代が到来した。

情報庁で働く官僚の御野・連レルは、超情報化社会の核となった情報素子のコードのなかに恩師であり現在は行方不明の研究者、道終・常イチが残した暗号を発見する。

その“啓示"に誘われた先で待っていたのは、ひとりの少女だった。

彼女は一般人ではありえない、世界最高の情報処理能力を持った、世界の全ての情報に手を届く人間だった。

道終が暗号を残した理由は、ただ4日間だけ彼女を保護してほしいとの依頼のためだけだった。

道終の真意もわからぬまま、御野は「すべてを知る」ため彼女と行動をともにする。

だがそれが、世界が変わる4日間の始まりだった。

野崎まどによる未来の社会を描いたSF小説。

 

「know」の見どころ

超情報化社会

”知っている” 

その言葉の意味はかつての社会とは変わってしまった。

二〇四〇年、「情報材」の開発により情報インフラは革新する。

フェムトテクノロジーの結晶である情報材は、微細な情報素子を含む素材・建材の総称だ。

通信を情報取得の機能を有する極小サイズの情報素子が、コンクリート・プラスティック・生体素材等、様々な物質に添加・塗布されている。

この情報材から世界の情報は爆発的に増加した。

超情報化社会。

あらゆる情報が、あらゆる場所で取得できる時代が到来した。

だが、この莫大な情報を扱うには人間の脳は脆弱すぎた。情報を全く扱いきれずに人類の新たな病気として情報強迫症、情報性うつ病が頻発して社会問題となる。

二〇五三年。日本の京都で”電子葉”が初めて人間に植えられた。情報取得と処理の著しい高速化。

人類はついに莫大な情報を扱う術を手にいれたのだ。

 

クラス

誰もが多くの情報を処理できるようになったが、手に入れられる情報の量と質などはクラスによって制限される。

通常の一般市民はクラス0から3までが付与される。

それ以上は専門の勉強をし、さらに国の主要な期間に勤めて初めて手に入る限定解除。

 

クラス4、情報を扱う職種、専門の資格所得者に付与される権限。

グラス5、情報局の上級職員、審議官以上に付与される権限。

クラス6、内閣総理大臣と各省大臣にだけ付与される権限。

 

『know』の主人公で情報庁で働く御野・連レルは若いながらもクラス5が与えられている優秀な官僚。

一般人ではありえないほどの多くの情報を扱うことができる。

そして、彼だからこそ”情報材”開発者である研究者、道終・常イチのソースコードに仕込まれた暗号に気づくことができた。

このことから一人の少女に出会い、世界を変える4日間に巻き込まれていくことになる。

 

道終・知ル

道終・常イチの娘で道終・知ルは通常の人間が付ける「電子葉」ではなく、量子コンピュータの電子葉「量子葉」を付けている。

この世界で最高の情報処理能力を持つ人間、ネットワークのすべてのセキュリティーホールをただ一人だけ利用できる人間だ。

あえてクラスで分類すると”クラス9”に属する。

御野・連レルは暗号を解いた結果、何をするでもなくただただ彼女と一緒に4日間生活してほしいと頼まれる。

だが、これが多くのトラブルを呼び寄せる世界を変える4日間となってしまった。

 

終わりに

というわけで『know』を紹介した。

野崎まどによる未来の超情報化社会をテーマとSF小説で、堅い文体ではなく読みやすめに書かれている。

タイトルの「know」は「知」と「脳」にかかっているのだろう。

まさかの結末に驚愕すること間違いない。

京都、電子葉、情報化などのキーワードに惹かれる人にはおすすめの小説である。

 

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