
蒲生稔は、逮捕の際まったく抵抗しなかった。
稔は、警察でもまったくおとなしく、質問されたことにはすべて答えた。
六件の殺人と一件の未遂について詳細に自白し、弁護士は国選で構わないと付け加えた。
試験判決したいして彼は控訴しなかったが、法務大臣の執行命令は、未だおりてはいないー。
東京の繁華街で次々と猟奇的な殺人を繰り返すサイコキラーが出現した。
異常な性癖を持った犯人による、くり返される凌辱の果ての惨殺。
殺害をする犯人、それを追う元刑事、その家族の三つの視点が事件を追いかける。
”叙述トリック”が美しいサスペンス小説。
どれだけ警戒をして読んだとしても、最終的に騙されることが間違いない。物語が一瞬で全て反転する。
かなり悪趣味で気分が悪くなるほどのグロテスクなシーンが何度かでてくるので読む前に少し覚悟が必要。
ただし、それを差し引いたとしてもぜひ読んでほしい名作小説である。
「殺戮にいたる病」の感想
母・蒲生雅子
蒲生雅子が、自分の息子が犯罪者なのではないかと疑い始めたのは、春の声もまだ遠い二月初めのことだった。
『殺戮にいたる病』は三者の視点で進んでいくが一人目は蒲生家の雅子である。
夫の給料は贅沢を言わなければ働きに出る必要がない程度にはあったし、息子・娘も授かって、地味で平穏な暮らしを送っていた。
だが、ここ最近の息子の様子が少しおかしく感じる。何かに脅えているように、苦しんでいるように見えた。
自分の視線を避けるくせに、じっと見つめているらしい時もある。仲の良かったはずの妹にも、ほとんど口を利こうとしない。
そんな息子の部屋のごみ箱から、赤黒い液体が残ったビニール袋を見つけてしまう。
その日は、連続猟奇殺人の二件目と思われる殺人が起きた日でもあった。
サイコキラー・蒲生稔
蒲生稔は異常な性癖に目覚めてしまったサイコキラー。
連続猟奇殺人事件の犯人で六人の人間をその手で次々と殺害していく。
蒲生稔が初めて人を殺したのは、雅子が不審を抱き始める三ヶ月も前だった。
街で歩いていて、家でテレビを見ていて、あるいは大学での授業中、息苦しさに我慢できなくなり、叫びたくなることがあった。そんな時、彼は決まって途方に暮れた。
自分が何をすべきなのか、まるで見当がつかなかった。
それが何か分かったのは、最初の殺人を犯してかただった。
元刑事・樋口
樋口は、元刑事で退職寸前まで不眠不休な捜査をこなしていて頑固な刑事との定評があった。
樋口は自分の恩人がシリアルキラー・蒲生稔の魔の手にかかったことから事件に巻き込まれていくことになる。
引退した刑事ではあるが、個人的に事件を追っていく。
かつて培った捜査能力を存分に発揮し、蒲生稔を追い詰めていく。
終わりに
というわけで、『殺戮にいたる病』を紹介した。
「かまいたちの夜」でも有名な我孫子武丸によるサスペンス小説。
東京の繁華街で次々と猟奇的な殺人を繰り返すサイコキラーが出現する。
殺人鬼・蒲生稔を中心に三人の視点で事件が進んで行く。
小説中のほとんどは壮大な前振りで最後の1ページで事件の真相はまるっきりひっくり返る。
叙述トリックの美しい名作。
ハラハラするサスペンス小説で思いっきり騙されたい人にはおすすめの小説である。
異常な”性”を伴ったかなりグロテスクな描写も多いので読む前に注意が必要。
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