
最初に断っておくが、これは不快な本だ。だから、気分よく一日を終わりたひとは読むのをやめたほうがいい。
世の中には知りたくもなければ信じたくもない”真実”が数多く存在する。
仮にその話を聞いたとしても、脳や心が理解を拒み、生理的に拒絶をしたくなってしまう。
往々にして、努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外ではなく、美人とブスの「美貌格差」は生涯で約3600万円もある。また、子育ての苦労や英才教育の多くは徒労に終わる。
そんな残酷すぎる真実を具体的なデータや実験に基づいて論じているのがこの『言ってはいけない 残酷すぎる』である。
社会にあふれるきれいごとを一刀両断した切れ味あふれる本となっている。
「言ってはいけない 残酷すぎる真実」のここが面白い
馬鹿は遺伝なのか?
頭の良し悪しは遺伝によって決まるのか?それとも育った環境によって決まるのか?
遺伝率と呼ばれる指標がある。
これは人間の様々な能力、例えば身長、体重、知能、性格、言語能力などにどれくらいの遺伝的な影響があるのかを図る指標である。
遺伝率の計算にはよく、一卵性双生児が用いられる。
とある一卵性双生児が生まれてすぐに親の事情によって別々の家庭、環境で育てられたとする。
そして20年後の彼らを見比べたとき、全く違うものを食べ、運動をし、睡眠をしていたのにも関わらず似たような身長、体重に成長していれば、身長、体重は育った環境ではなく遺伝による影響が大きいだろうとの結論になる。
これを数多の一卵性双生児や、他にも一卵性双生児と二卵性双生児を比較することなどによって計測し、遺伝率を求めていく。
血液型の遺伝率は100%である。だれが親かでのみに依存して血液型は決定する。
身長の遺伝率は66%、体重の遺伝率は74%である。やはり、親の影響を大きく受ける。
では、頭の良し悪しは遺伝するのか?
論理的推論能力の遺伝率は68%である。
知能指数(IQ)の遺伝率は77%である。
頭の良し悪しの7〜8割は遺伝によって説明できてしまう。この影響は大きい。
残念ながら、その子が将来勉強できるようになるかどうかの大部分は生まれた瞬間に決まってしまっている。
うつ病は遺伝の影響を受けるのか?
同じことがいわゆるうつ病にも言うことができる。
様々な研究を総合して推計された結果によると、
統合失調症の遺伝率は82%、双極性障害(躁鬱病)の遺伝率は83%である。
この数字は親がうつ病なら子供は8割の確率でうつ病になるといったわけではない。
身長が高い親の子は背が高くなる可能性が高く、うつ病の親の子はうつ病になりやすいということを比較するための数字である。
そして、その遺伝の影響はなんと身長・体重の影響よりも大きい。
うつ病は遺伝するとの「科学的知見」が得られている。
犯罪性は遺伝するのか
最後に”犯罪性”はどうだろうか?
とある調査で反社会的な傾向の遺伝率が調べられた。
それによると「冷淡で無感情」といった性格をもつ子供の遺伝と育った環境の影響は、遺伝率が30%、環境が70%とされた。
子供の性格は知能とは違い、育った環境、子育ての影響が大きいとの結果がでた。
”頭のいい子”を育てるより、”優しい子”を育てることのほうが容易なのである。
だが、犯罪を起こすような極めて高い反社会性を持つ子供たちはどうだろうか?これも育った環境による影響か?
反社会的な傾向をもつ子供たちの中から、さらに極めて高い反社会性をもつ子供のみを抽出すると、その遺伝率は81%で環境の影響は2割弱しかなかった。
犯罪を起こすような歪みを持った子供を矯正することは難しい。犯罪性に関しても遺伝の影響がかなり大きいのだ。
以上の科学的な実験結果から、鬱や犯罪性、知能は遺伝による影響を大きく受けるとの結果が導かれた。
残酷だがこれが”真実”である。
終わりに
というわけで、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』を紹介した。
今回紹介した遺伝の話以外にも、「美人とブスの経済格差は3600万円」 「男女は決して平等にならない」「女性はなぜエクスタシーで叫ぶのか」などの刺激的だが、残酷な内容が多く含まれる。
これらは全てデータに基づき語られていて、説得力があり面白い。だが、例え”真実”だとしても外では言わないほうがいいだろう。ただ、嫌な奴として嫌われるだけだ。
そういった意味での『言ってはいけない 残酷すぎる真実』という本のタイトルになっているのだ。
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