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ベンチャー企業の起業から破綻までのノンフィクションの物語『社長失格』【本おすすめ】

 

1つのベンチャー企業が破産宣告を受けて倒産した。

負債総額三十七億円。

インターネットを使った新サービスで脚光を浴びた、ハイパーネットという企業である。

1996年3月期には売上高約7億円、経常利益約2億円を記録。

大手証券会社や銀行などから融資の申し出が殺到し、米マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長までが面会を求めてきたという"栄光"から、わずか2年足らずの間での転落劇だった。

なぜ、ハイパーネットは挫折したのか。

当事者中の当事者だった「元社長」が倒産の理由を1冊にまとめたのがこの『社長失格』である。

大成功しもてはやされる企業の裏には、その何倍もの「失敗」した企業が存在する。

その敗戦記が記された貴重な本。

軽妙な語り口で書かれていて物語として読んでももかなり面白い。

 

「社長失格」のここが面白い

起業からの話

この本には、著者の板倉雄一朗氏の起業から栄光を勝ち取り、破産するまでの話が時系列を追って書かれる。

破産した次の年に書かれた本であるため著者の記憶が新しく、克明に書かれていてかなり面白い。

ハイパーネット社の設立時のメンバーはたったの4人だった。事業もなく事業計画も曖昧な状況での起業だった。

しかし社長の努力の甲斐もあって、多くの出資者を募り資金を調達することに成功し、徐々に事業が大きく成長していく。

最終的には30億円以上の資金調達に成功する。

しかし、この出資者が問題だった。のちにこれが会社を潰す引き金となる。

 

インターネットでの広告事業

ハイパーネット社が世間の注目を集めることになったのはインターネットの広告事業である。

ハイパーネット社の作った「ホットカフェ」と呼ばれるサービスがある。ユーザーがブラウザを起動するとブラウザとは別にもう一つのウィンドウが開かれる。

ここに広告が表示される。この表示する広告なのだが、全ユーザーに対してテレビCMのように同じ広告を配信するわけではなく、ユーザーにあった広告を表示する。

ユーザーのデータを集めることが肝心だが、これはプロバイダと協力をして集める。

生命保険に興味のある人には生命保険会社の広告を表示し、お酒好きの人にはお酒の広告を表示することが可能となる。

起業にとっては広告の無駄打ちを防ぐことが可能となる。

現在でいうところのGoogle Adsenseのような仕組みである。21世紀となっては珍しくもないアイディアだが当時は画期的であった。

実際にこのアイディアを元に何十億者資金が集まり、ビル・ゲイツまでもが面会を求めに来たほどだった。

現在のインターネット広告の現状から考えると、このアイディア自体は正しかったように思う。

 

失敗の原因

では、何故このサービスはうまくいかなかったのか。

板倉氏曰くいくつかの原因があると反省している。

一つ目が、資金調達の方法。ハイパーネットでは主に銀行からの融資を受けていた。

当時のITブームもあり、複数の銀行が足並みを揃えて億単位のお金を融資をしてくれた。だが、資金を引き揚げるときも一緒だった。このことでハイパーネットは一気に資金難に陥る。

二つ目に、インターネット広告業界の伸びの鈍さである。ハイパーネットは当時のネット広告を配信している会社の中でのシェア率はかなり高かった。

しかし、市場規模の伸びは想定よりもかなり遅かった。時代がまだまだ追いついていなかったのである。

三つ目に、社内のマネジメントの失敗。板倉氏の主な業務が資金調達等の業務になってしまい、社員たちとのコミュニケーションを怠った。これにより、社内でクーデターを起こされかけるなど、まとまりのない組織となってしまう。

これ以外にも経営者としてのいくつかもの失敗が述べられている。

経営者としてや上司としての組織マネジメントで意識すべきことの反面教師となるはずだ。

 

終わりに

というわけで、『社長失格』を紹介した。

一時期大注目を浴びたベンチャー企業の起業から破綻までの実話が社長の口から語られた本。

何故、会社の経営がうまくいかなかったのか?失敗の原因などが生々しく書かれている。物語としてもかなり面白く読める。

マイクロソフトのビル・ゲイツ氏、ソフトバンクの孫正義氏、ドワンゴの夏野剛氏など今でも活躍している様々な人々が出てくるところも見どころ。

反面教師としてマネジメントやベンチャー企業の起業、経営のことを学びたい人にはおすすめの本である。

 

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