
一族が会する席で、その長が殺される事件が発生した。
高校一年生で殺された男の孫の渕上久太郎は、特殊な力を持っている。
一度その現象が始まると、同じ日を九回繰り返す。
彼はこの力によって祖父の殺人を阻止しようと試みる。だが、殺しを止めることができない。
彼は、九回繰り返される同じ日で孤軍奮闘することになった。
特殊な力を持った少年探偵によるミステリー小説の名作。歪んだ時空の中で彼は知恵を振り絞る。
「七回死んだ男」のここが面白い
事件の背景
殺された渕上零治郎は大手レストランチェーングループの会長で莫大な資産を持っている。
そして、彼はグループのトップの後継者を自身の五人の孫か、二人の秘書の中から選ぶと告げていた。
後継者の名前は零治郎の遺書に書かれており、その名は新年を迎えるごとに変化する。
零治郎家で開かれる、新年会にはこの後継者候補たちを含めて一族が毎年、集まってきていた。
そして、今年の新年会において事件が発生した。
久太郎の力
久太郎は五人の孫たちの中では一番の年下で高校一年生。
彼は、同じ日を九回繰り返すという特殊な力を持っている。この力は自分では制御できずに唐突に発動をする。
最初の「 周」は 言わばオリジナルの日で、これが一周目である。
この日には久太郎には能力が発動している自覚はない。
そして二周目の朝が訪れたときに、同じ日がもう一度始まっていることに気づく。
三周目、四周目、五周目、六周目、七周目、八周目ときて最終周がやってくる。
二周目から八周目までは何をやっても次の周にはまた元へ戻るが、 最終周である九周目に起こったことが自分以外の周囲の人間たちにとっては本来的な「その日の出来事」、久太郎にとっては「最終的な決定版」 となる。
久太郎はこの力を使って、その日を最良の一日にするために何度も実験することができるのだ。
そして彼の力が発動した新年会の日に、祖父が殺される事件が発生した。
彼は祖父の死を阻止しようと奮闘するが、どうしても止められない。
久太郎にとっての戦いの「一日」が始まった。
ミステリー小説の傑作
ここまでの説明を読んでもらえるとこの小説は超能力少年によるタイムトラベルを使ったSF小説のようにも感じるかもしれないが、この小説はミステリーとしての要素が強い。
この物語の全体に大きな罠が仕掛けられている。
最後まで読み進めたときに物語が一気にひっくり返る。
その瞬間の衝撃が凄まじい、ミステリー小説の傑作である。
終わりに
というわけで、『七回死んだ男』を紹介した。
特殊な力を持った少年が祖父の殺人を阻止しようと孤軍奮闘するミステリー小説。
最後の最後で物語は一気に変化をする。個人的にこの小説のエンディングはかなり好き。
爽快に騙されたい人にはおすすめの小説である。
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