
星新一によるショートショートの自選集。
ミステリー、SF、ファンタジー、寓話、童話などのあらゆるジャンルのショートショートから選ばれて、特に初期作品を多数収録している。
表題作品「ボッコちゃん」をはじめとして、「おーい でてこーい」「盗んだ書類」「マネー・エイジ」「親善キッス」「よごれている本」「月の光」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「殺し屋ですのよ」「ゆきとどいた生活」「暑さ」など、ときに楽しく、ユニークな発想も見られて、ショープな風刺も効いている様々なショートショートをこの一冊で読むことができる。
全部で50編収録される。
「ボッコちゃん」のここが面白い
もしも、なんでも吸い込む穴が出現したら「おーい でてこい」
この小説に収録されている中で特に印象に残っているショートショートを3つか紹介したいと思う。
まずは、「おーい でてこい」。
台風が去った後、とある村に直径1メートルくらいの穴が出現した。
中を覗き込んでも真っ暗で何も見えない。まるで、地球の中心まで突き抜けているような深い穴な気もする。
この正体不明の穴の処遇に対して、村人たちは困ってしまう。
すると、そこに利権屋が現れてこの穴が欲しいと言い出した。十分なお礼がもらえたので村人たちはこの穴を譲ってあげる。
そして、この利権屋は機密書類や原子炉のカスなど、処分に困るものをこの穴へと捨て始めてしまう。
...というところから始まる物語。我々が生きている世界ではこんな便利な穴はないのだが、似たようなことをしているのかも...。
そして、村人たちと同じ目に遭ってしまうのでは?と思わされてしまう風刺の効いたショートショートとなっている。
宇宙人とのファーストコンタクト「親善キッス」
地球人の親善使節団一行は長い旅路をへて、チル星にたどり着いた。
人々も街も地球そっくりに見える。可愛い女の子もいる。
そこで、ちょっとしたスケベ心を出した船員たちは、地球にはあいさつでキスをする習慣があると言い出した。
相手は驚いたが、彼らの企みは成功し船員たちはチル星の人々とキスをすることに成功する。
たまに、おじさん相手などの嬉しくない相手もいたのだが、十分にいい思いができたと思っていた。
...が、物語はとんでもないオチを迎えてしまう。
彼らの迎えたひどい結末に笑えるショートショートとなっている。
死神と呼ばれる仕事「生活維持省」
この国は豊かで、平和な国家作りに成功した。
強盗、詐欺などの悪は消え去り、交通事故、病気、自殺も全て無くなった。
これは、政府の仕事をし、人々から死神と恐れられる「生活維持省」の働きによって実現されていた。
彼らの仕事は人を殺して減らすこと。
人口を完全に制御することによって、政府はこの平和国家を実現していたのだ。
残りの全ての嫌なことを消すために、人を殺すことは許されるのか?
間変えさせられる物語となっている。
終わりに
というわけで、『ボッコちゃん』を紹介した。
星新一によるショートショートで全50編が収録されている。
SF、ミステリー、童話、寓話などあらゆるジャンルの物語が含まれている。
笑えたり、悲しかったり、複雑な感情になったりと感情を揺さぶられるショートショートの数々を読みたい人にはおすすめの小説となっている。
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