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人類の未来に待ちぶせる悲喜劇を、皮肉げに笑いに変えた物語「ようこそ地球さん」【小説感想】

 

文明の亀裂をこじあけて宇宙時代をのぞいてみたら、人工冬眠の流行で地上は静まりかえり、自殺は信仰にまで昇華し、宇宙植民地では大暴動が惹起している。

人類の未来に待ちぶせる悲喜劇を、皮肉げに笑い、人間の弱さに目を潤ませながら、奇想天外、卓抜なアイデアをとりまぜて描いたショートショート42編を収録される。

こんなことが将来の地球でも起きるかも...との不思議な予感を感じてしまう物語の数々を楽しむことができる。

 

「ようこそ地球さん」のここが面白い

地球に訪れた宇宙人への地球人の対応は...「友好使節」

正体不明の物体が地球に近づいていることが判明した。

他の星の宇宙船のようであり、侵略に来たのではないかと戦々恐々としながら地球人はこの宇宙船を迎えることになる。

降りてきたのは、一つの頭に二つの足を持っているのだが、頭と足の間に細長い胴とたくさんの手を持った不気味な宇宙人だった。

地球人達は内心で彼らを軽蔑しながらも、表面上は歓迎の気持ちを示した。

ここで問題となったのが、この宇宙人達が精神判読機を持っていたこと。

言ってることと思っていることが全然違う地球人を見た彼らは、とんでもない”友好のメッセージ”を発してしまうことになる。

 

政府主導のテレビ番組の秘密「テレビ・ショー」

地球では政府主導のテレビ・ショーを制作することになり、子供たちに見せていた。

保護者たちはこのテレビ・ショーが流れる時間になると、例え子供が運動していようが勉強していようが必ずテレビの前に座らせる。

ここまでして子供たちに見せる番組は、男女が服を脱ぎ互いに抱き合う低俗で淫らなものである。

だが、この不思議な番組には人類の行く末を占う悲しい秘密が隠されているのであった。

 

人類最後のビジネスとは「最後の事業」

冷凍睡眠が実用化された世界。

人間が冷凍睡眠をすれば冬眠状態となり、年を取らずに未来に行くことができる。

オーロラ冬眠会社はこの冷凍睡眠でビジネスをすることになった。

事業は好調で人類はひとり、またひとりと未来へ旅立って行くことになる。

そして、ほとんど誰もいなくなった地球に異星人が訪れる。

地球人とコミュニケーションをとることができない彼らはとある困難を乗り切るために、”地球上の絶対に手をつけてはいけないもの”に手をかけてしまう。

 

終わりに

人類の未来に待ちぶせる悲喜劇を、皮肉げに笑いに変えた星新一のショートショート集「ようこそ地球さん」。

地球の命運は、地球人や異星人などにより何度もピンチを迎えることになってしまう。

「大人向けの童話集」という言葉がぴったりの作品で考えさせられるような描写も多い。

”短い”けど”深い”物語の数々を楽しみたい人にはおすすめの小説となっている。

 

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