
華氏451度。この温度で書物の紙は引火し、そして燃える。
451と刻印されたヘルメットをかぶり、昇火器の炎で隠匿されていた書物を焼き尽くす男たち。
本の所持を禁止された世界で、本を所有しているだけで逮捕されて、その本は燃やされる。
モンターグも自らの仕事に誇りを持つ、そうしたファイアマンのひとりだった。
しかし、彼はとある風変わりな少女との出会いをきっかけに「禁断の書籍」に興味を持ってしまった。
彼は、自分の命を脅かしかねない危険すぎるものを手にとってしまうことになる。
本が忌むべき禁制品となった未来を舞台とした物語が紡がれる。
「華氏451度」のここが面白い
本の存在が禁止された世界
おれは若いころ、ほんのなんたるかを知る必要に迫られて何冊か読んだことがあるんだが、本はなにもいってないぞ!
人に教えられるようなことなんかひとつもない。
信じられることなんかひとつもない。
小説なんざ、しょせんこの世に存在しない人間の話だ、想像のなかだけの絵空事だ。
ノンフィクションはもっとひどいぞ。
どこぞの教授が別の教授をばか呼ばわりしたり、どこぞの哲学者が別の哲学者に向かってわめきちらしたり。
どれもこれも、駆けずりまわって星の光を消し、太陽の輝きを失わせるものばかりだ。
お前は迷子になるだけだぞ
(出典:『華氏451度』)
この世界では本を読む事や、本を所持することが禁止されてしまっている。
本は過去の遺物であり、読むことによって何も得るものはない無駄なものとして扱われる。
本を持っているものはいないか?
市民の中では密告が奨励され、書籍を手に取ろうとするものは誰もいなくなってしまっていた。
本を燃やすもの・ファイアマン
歩きつづけてるうち、少女がまたいった。
「遠いむかしファイアマンっていうと、火をつけるんじゃなくて火を消すのが仕事だったんですって。そんなこと聞いたけど、ほんとうなの?」
「ばかな。家というのは、元から焼けないようにできてるんだ。嘘じゃないよ」
「変ね。むかしは建物がまちがって燃えだすことがよくあって、その火を消すためにファイアマンができたっていうわ」
(出典:『華氏451度』)
万が一に書籍が見つかって場合には、ファイアマンが派遣される。
彼らは本を燃やすものたちで、今後その本を手に取るものが誰もいなくなるようにと、火によって書籍を跡形もなく消し去っていく。
こうして、世界からはどんどんと書籍が消えていってしまった。
それは、すなわち本に記されている先人たちの知恵や知識も失われてしまっていることを示している。
ファイアマン・モンターグ
モンターグもファイアマンの一人として書籍を燃やしてきた。
彼は自分の仕事に誇りを持って、何の疑いも持たずに書籍を葬り続けてきた。
しかし、そんな彼の目の前にひとりの少女が現れた。
彼女は、ファイアマンの存在や彼らの仕事、本についての疑問を投げかける。
本ってそんなに悪いものなの?
モンターグは彼女の言葉に心が揺さぶられて、ついに「禁断の書籍」に手を伸ばしていってしまう。
終わりに
書籍が全面的に禁止されて、発見次第直ちに燃やされてしまっている世界での一人の男の物語『華氏451度』。
本の重要性や本の存在意義に対して、何かを訴えかけてくるSF小説となっている。
ファイアマン・モンターグの運命はどうなっていくのか?
彼の壊れていく日常に興味のある人には是非とも読んでもらいたい、面白いSF小説となっている。
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