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なんでもショウユに突っ込むから、日本食なんて全部同じ味だ『英国一家、日本を食べる』【本感想】

 

「おまえに、日本料理の何がわかるっていうんだよ。えっ?」

とある日本人と、料理について語り合っていたイギリス人は、こう吐き捨てるように言われてしまった。

日本食に対して興味なんてない。確かに、日本食の理解が浅いかもしれない...。

しかし、日本食に関する一冊の本との出会いで、その考えは変わってしまう。

日本に行きたい。日本食を食べたい。

そのことを妻に相談すると、なぜか妻と子供達までついて来ることになってしまった。

こうして、英国一家の3ヶ月の日本旅行が始まった。

東京、北海道、京都...と日本のあらゆる場所に滞在して、日本を食べ尽くす。

外国人から見た「日本」や「日本食」のことがわかるノンフィクションである。

 

英国一家、日本を食べる

日本料理はみんな同じ味?

「充分わかってるさ、すごく味気ないってことは。

日本料理なんて見かけばっかりで、風味のかけらもないじゃないか。

あれに楽しみがあるのか?温もりがあるのか?もてなしの心があるってのか?脂肪もなけりゃ味わいもない。

どこがいいんだよ?生の魚に、ヌードルに、揚げた野菜だろ──

しかもみんな、盗んだ料理だ。タイとか、中国とか、ポルトガルから。

まあ、どこだって関係ないか。

だって、何でもかんでもショウユに突っ込むだけだから、みんな同じ味だよ。

いい魚屋がいて、切れる包丁さえあれば、日本料理なんて誰だって作れるね。違うか?

タラの精巣にクジラの肉だって?──

ぜひともお目にかかりたいものだね」

(出典:『英国一家、日本を食べる』)

 

「おまえに、日本料理の何がわかるっていうんだよ。えっ?」

日本人に言われた売り言葉に買い言葉で、英国人は、このように反撃した。

日本食なんて、ショウユに突っ込んで、みんな同じ味さ。

それくらいにしか、日本食に興味がなかったのだ。

しかし、そのことを行った後で、その日本人が、もっと日本食を理解しろと渡してくれた本「辻静雄著『Japanese Cooking : A Simple Art』」によって、考えが180度変わってしまう。

これは、もう実際現地に行って、この目で見て、自分の舌で味わってみるしかない。

こうして、日本に旅立つことを決意した。

 

なぜか妻に子供までついて来ることになってしまって

その日の晩、とりあえず妻のリスンにアイデアを話してみた。

「あら、それはすごいじゃない」彼女はそう言った。

「ぜひ日本へ行きたいわ。子どもたちも連れて行くといいわよね。きっと一生の思い出になるわ。そうでしょ!」

「いや、ちょっと待って。えっと……そういうつもりじゃなくて……ほら、だから、調査とか……インタビューとか、いろいろ……」

もう手遅れだった。

僕を見る彼女のまなざしから、すでに心はどこかに飛んでいて、豪華なキモノや、敷き詰めた小石に熊手で整然と模様をつけた 庭を眺めながらのザゼンや、デューティーフリーショップで思い切り買い込んだキラキラする箱に入った化粧品の山やらで、いっぱいになっているのがわかった。

過去の経験からいうと、こうなってしまったら、戦おうとしても無駄だ。

(出典:『英国一家、日本を食べる』)

 

とにかく日本へ飛んで、じっくりと、計画的に、貪欲に、仕事をしてやろう。

北の島、北海道から南へ向かい、東京、京都、大阪、 福岡を訪ね、沖縄の島々へも足を伸ばし、各地で食べて、インタビューして、学んで探求する。

日本ならではの食材を味わい、 日本料理の哲学、技術、そして言うまでもなく、健康上の恩恵について学習する。

彼は、一人っきりで、日本に行き、日本食を食べ歩いて、存分に日本食を研究するつもりだった。

しかし、これを妻に相談したのが運の尽きだった

結局、日本食の研究が、妻や子供を引き連れたちょっと長めの家族旅行になってしまう。

だが、妻や子供を連れて行ったがゆえに見えて来る日本や日本食の良さもあった。

 

外国人なりの独特の日本の味方

納豆は、日本の伝統的な、身体にいい朝食のおかずだ。

大豆を適度に発酵させたもので、すごくまずそうで、糸を引いていて、表面がデコボコしていて、胸が悪くなるほどで、その味ときたら、土と古い チーズを混ぜたような感じだ。

後にも先にも一度だけ口にしたのは、札幌のホテルのビュッフェ形式の朝食だった。

僕が何よりもぞっとしたのは、皿によそおうとしたときに現れた、ひとつひとつの豆にまとわりつく強い粘り気のある糸だ。

恐ろしい臭いを発するドリアンやトリュフと並んで、納豆は地球上でも有数の好き嫌いがはっきり分かれる食品だ。

(出典:『英国一家、日本を食べる』)

 

彼らは、とにかく日本食を食べて、食べて、食べまくる。

その食事や食べ物の表現が独特で面白い。

外国人が、日本食を見るとこういう風に感じるのかと、素直に感心する。

この本は、外国人から見た日本の文化や日本食についてわかるノンフィクションの本である。

彼らの視点を通じて、新たな日本に対する発見があるはずだ。

 

終わりに

というわけで、英国人の家族が日本の旅の日々を書いた『英国一家、日本を食べる』を紹介した。

外国人から見た「日本」や「日本食」のことがわかるノンフィクションで、外国人なりの見方が面白い本である。

この本を通じての新たな、「日本」や「日本食」の発見があるはずである。

外国人による、日本旅行記や日本食研究本に興味がある人には、是非とも読んでほしいおすすめのノンフィクション本となっている。

 

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